
2024年5月15日夜、中国スマートフォン大手の小米(Xiaomi)の創業者である雷軍氏が、自社開発の新型SoCチップ「玄戒O1」を突如発表しました。5月下旬の正式リリースを予告する形で、微博(Weibo)やIT之家、酷安などのSNS・ITフォーラムでは瞬く間に話題となり、ユーザー間で“賛否両論”の議論が加熱しています。
澎湃S1から8年、「玄戒」シリーズでSoC開発再始動
小米のSoC開発は、2017年に発表された「松果澎湃S1」にさかのぼります。初めて搭載されたのは小米5cという廉価モデルで、**Cortex-A53をベースにしたオクタコア構成(2.2GHz×4+1.4GHz×4)**と、Mali-T860 MP4 GPUを採用していました。
しかしS1以降、スマートフォン向けSoCの開発は一時停滞し、その後はISP(画像処理)や電源制御向けの「澎湃C1 / G1 / P1」などにシフト。今回の玄戒O1は、8年ぶりに本格的なSoC開発を再始動した象徴的な存在といえます。
スマホメーカーでSoC自社開発が可能なのは世界に6社のみ
現在、自社でスマートフォン向けのSoC(システム・オン・チップ)を開発・製造しているのは、以下の6社に限られています:
メーカー | チップシリーズ | 備考 |
---|---|---|
Apple | Aシリーズ / Mシリーズ | iPhone・iPad・Mac全体で独自設計 |
Huawei | 麒麟(Kirin)シリーズ | スマホ市場に復帰、PC向け「X90」も準備中 |
Samsung | Exynosシリーズ | 国内では影が薄くなっているが歴史は長い |
Tensorシリーズ | 実質的にはSamsungとの共同開発 | |
Lenovo | SS1101(タブレット向け) | スペック・性能は未確認 |
Xiaomi | 澎湃 / 玄戒シリーズ | 澎湃S1以来の本格SoC、再起動となる玄戒O1 |
その他のOPPO、vivo、OnePlus、ZTE、RedMagic、HONOR(荣耀)などのブランドは、基本的にQualcomm(クアルコム)、MediaTek(聯発科)、UNISOC(紫光展锐)など外部ベンダー製のSoCに依存しています。
スペックは?――4nmプロセス、X3+A715+A510構成との噂も
現時点で小米からの公式なスペック発表はありませんが、SNSや技術系フォーラムで流れている情報によると:
- 製造プロセス:TSMCのN4P(4nm)
- CPU構成:
- 1×Cortex-X3(3.2GHz)
- 3×Cortex-A715(2.5GHz)
- 4×Cortex-A510(2.0GHz)
- GPU:Imagination社製 IMG CXT-48-1536
この構成は、高性能チップであるQualcomm Snapdragon 8 Gen 2よりやや下回ると見られています。特にA710の中核がなく、AI処理能力やGPUの最適化も未知数なため、Apple A16 BionicやMediaTek Dimensity 9200クラスと同等程度ではないかという見方が有力です。
初搭載は「小米15S Pro」と予想、Civiシリーズとの棲み分けも?
玄戒O1の初搭載モデルは明言されていないものの、業界関係者の間では**「小米15S Pro」に採用される可能性が極めて高い**と予測されています。発売時期は5月末〜6月上旬との見方もあり、同じく発表が近いとされる「小米Civi 5 Pro」(こちらはQualcomm系SoC採用か)とはスペック的に差別化される模様です。
なお、「玄戒(げんかい)」というネーミングについては、今後「O2」「O3」と続くシリーズ化を示唆している可能性もあり、これまでの澎湃シリーズ(P/G/C)との統合や再編成が行われるのではないかとの憶測も飛び交っています。