ChatGPTの登場を皮切りに、世界各地で生成AIと大規模モデル(大模型)の開発競争が活発化しました。特に中国では多くの大模型が急増し、その多くは産業用途に特化しているのが特徴です。
中国AIGC市場規模の拡大と今後の見通し
米OpenAI社のChatGPTが火付け役となり、生成AI(プロンプトに応じて文章や画像、動画を自動生成する技術)と、それを支える「大模型」のブームが世界中で広がっています。中国ではメガテック企業をはじめ、多岐にわたる事業者や研究機関が大模型分野へ参入し、急成長を遂げています。中国工業・情報化部傘下の市場調査会社「賽迪顧問」によると、2023年7月末時点で中国国内で発表された大模型の数は130に達し、世界全体の48.5%を占めています。こうした急速な成長の背景には、AI産業基盤の国策レベルでの支援があり、中国政府は2015年にAIを重点産業に位置づけ、2017年には「次世代AI発展計画」で2025年に市場規模を4,000億元以上、2030年には1兆元以上に拡大する目標を掲げています。
大模型の性能向上とAIGC市場の成長
大模型は生成AIの性能を大幅に向上させ、今後もさらなる進化が期待されています。中国では様々な産業における大模型の導入が急速に進展しており、これがAIGC(AI生成コンテンツ)市場拡大の起爆剤となる見込みです。調査会社iResearchによれば、2022年に25億元だった中国のAIGC市場は、2025年には1,223億元、2030年には1兆1,441億元に達すると予測されています。
産業向けに特化した大模型と法人ビジネスへの集中
中国の大模型開発は産業向けに特化する傾向が強く、各社は生成AI技術を自社サービスに組み込み、法人向けビジネスに注力しています。百度、アリババ、テンセント、ファーウェイ(BATH)のような大手企業は、「MaaS」(Model as a Service)という新しいビジネスモデルを導入し、クラウドとAI技術を融合した大模型プラットフォームの構築に取り組んでいます。また、各企業は自社の専門分野に応じた大模型の開発にも注力しており、金蝶国際軟件(ERP)、閲文集団(ネット文学)、北京金山弁公軟件(オフィスソフト)がそれぞれ特化モデルを提供しています。基盤モデルには莫大な計算リソースが必要なため集約化が進むと見られますが、産業別の特化型モデルとその応用範囲は広がりを見せるでしょう。
中国初の「商学大模型」採用データベースの登場
2024年10月26日、北京大学HSBCビジネススクール(PHBS)は深圳大学城体育中心(深セン大学タウン・スポーツ・センター)で創立20周年を迎え、式典にて「智能中国企業数据信息庫(中国企業インテリジェント情報ベース)」の試用版を公開しました。これはAI時代におけるビジネス教育と実践におけるPHBSの新たなステップとなるもので、企業信息中心(企業情報インテリジェント・センター)のディレクターである魏煒(ウェイ・ウェイ)氏は、「内部開発のインテリジェント技術プラットフォーム、ExpertCPTを採用した中国初の企業データベースであり、これにより企業情報の照会や経営事例の研究が大幅に強化される」と述べています。