2025年10月現在、中国本土では eSIM(Embedded SIM)の導入と運用に関する制度が段階的に整備され、Apple の「iPhone Air(型番 A3518)」をきっかけに、各通信事業者の対応方針が明確化されつつある。現地の複数の関係者が語るところによると、実際の利用環境にはいくつかの制限が設けられており、国内外での挙動にも違いがあり、中国版 iPhone Air の eSIM 制限は想定以上に厳しいという。
【1】中国版 iPhone Air:eSIM は最大 2 枚まで
Apple 無線ソフトウェア担当副社長 Arun Mathias 氏による説明によれば、中国本土向けモデル iPhone Air は、最大 2 枚の eSIM まで登録・有効化が可能とされている。
- 中国国内・海外の通信事業者を問わず、合計 2 枚が上限。
- すでに 2 枚の国内 eSIM を登録している場合、海外で新しい eSIM を追加するには、あらかじめ 1 枚を削除する必要がある。
- 中国本土では海外事業者の eSIM を直接追加することはできず、海外(例:香港など)でのみ追加・有効化が可能。
【2】eSIM 削除後の再有効化ルール
| 削除の場所 | 再有効化の可否 | 手続き方法 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 中国国内で削除 | 可能 | 国内通信事業者の営業所で、本人確認(身分証提示)による再発行が必要 | オンラインでの再発行は不可 |
| 海外で削除 | 原則不可(海外では再発行できない) | 中国帰国後、営業所で再発行手続きが必要 | 代理人不可、本人来店必須 |
| 海外で新規 eSIM 追加(現地事業者) | 可(上限 2 枚の範囲内) | 現地通信事業者の QR コード等を利用 | 国内事業者の再有効化とは別扱い |
中国キャリアの eSIM は、国内サーバーで認証・発行されるため、海外からの再ダウンロードや復旧は行えない仕組みとなっている。
旅行・出張中に誤って eSIM を削除した場合、その回線は中国帰国まで利用不可になるため、削除せず「無効化(オフ)」にとどめることが推奨されている。
【3】通信事業者側の運用条件
中国の主要通信事業者(中国電信・中国聯通など)は、eSIM の発行・登録に際して以下の条件を設けている。
● 年齢制限
- eSIM の申請は 18歳以上60歳以下 の個人に限定。
- 60歳を超える場合、システム上登録ができない。
- 現在は試験運用段階であり、今後の調整が予定されている。
● 本人確認
- 申請には 本人の身分証明書と対象端末(iPhone Air、Huawei Mate XT など) が必要。
- 未成年者、代理申請、オンライン申請は不可。
● 省をまたぐ手続き不可
- eSIM への番号切り替えは 番号登録地の省内のみで可能。
例:北京登録の SIM は北京でのみ eSIM 化が可能。
● 登録上限
- 1台のスマートフォンにつき 最大 2 件の eSIM 番号。
- 個人名義で保有できる携帯番号は 最大 5 件。
【4】運用の背景
eSIM は現在、中国本土では「試験運用」段階にあり、実名認証・身分確認・属地管理などを重視した形で運用されている。これらの制度は、通信の安全性と番号管理の一貫性を保つことを目的としている。将来的には、利用状況や技術環境を踏まえて、年齢要件や発行手続きが見直される可能性があるとされている。
【5】国際的な運用との比較
| 項目 | 中国本土 | 香港/日本/欧米 |
|---|---|---|
| 発行方法 | 営業所での本人確認が必要 | オンラインで即時発行可 |
| 年齢制限 | 18~60歳 | 特に制限なし |
| 地域制限 | 省単位での手続き | 制限なし |
| 登録上限 | 2 | 約8(iPhone基準) |
| 運用段階 | 試験運用 | 商用運用(定着段階) |
■ まとめ
中国本土では、eSIM の導入が本格化する中で、安全性と実名制を重視した運用が行われている。
iPhone Air のような最新機種では、技術的な対応と制度上の制約が並行して存在しており、現時点では「上限2枚」「属地手続き」「本人対面認証」といった条件のもとで利用が進められている。今後は、運用実績の蓄積や制度調整を通じて、より利便性の高い運用環境への発展が期待される。