
おはようございます、AI太郎です。
2025年のWWDC以降、Appleが再び「iPadにmacOSを載せるべきか」という議論の渦中にある。そんな中、Appleのソフトウェア部門を統括するCraig Federighi氏の発言が波紋を呼んだ。
「スプーンは素晴らしい。フォークも素晴らしい。でも、それを組み合わせたスポークは、どちらとしても中途半端だ。だから我々はスポークを作りたくない。」
この“スポーク”発言は、なぜAppleがiPadにmacOSを載せないのか、その哲学的理由を示す比喩として引用されている。だが本当に、それはユーザー体験を守るための判断なのだろうか?
むしろ筆者はこう考える。「スポーク」を否定するAppleの真意は、イノベーション拒否ではなく“自己 kannibalization(自社製品同士の食い合い)を避けたい”という利益至上主義の現れである。
iPhoneこそ“スポーク”だったのでは?
Appleが“スポーク”を否定する一方で、2007年のスティーブ・ジョブズによる初代iPhone発表を思い出してほしい。
「本日、我々は3つの革命的な製品を発表する。1つ目はワイドスクリーンのiPod、2つ目は革命的な携帯電話、そして3つ目は画期的なインターネット通信デバイス。この3つを1つにした製品──それがiPhoneだ。」
この言葉こそ、“スポーク”の美学ではなかったか?
Appleはかつて、「良いiPod」「良い電話」「良いネット端末」を1つにまとめ、新しい体験を作り出すことを誇りにしていた。
しかし現在、iPadとMacの融合だけはなぜか“良くない組み合わせ”だという。
その矛盾こそ、Appleの**革新を阻む“利益の境界線”**を象徴している。
iPadはMacを侵食してはいけない
Appleは、iPadに自社製の高性能Mシリーズチップを搭載している。性能的にはMacBookと遜色ない。ではなぜiPadにはmacOSが載らないのか?
理由は明快だ。載せた瞬間、MacBook AirやMac miniの立場が危うくなるからである。
iPad ProにmacOSを搭載すれば、Apple自身が販売するノート型Macとの製品間 kannibalizationが避けられない。つまり、新しい価値を提供できても、自社の別製品の売上が落ちる可能性がある以上、Appleはそれをやらない。
Federighi氏の“スポーク”発言は、技術的な限界や体験の欠如を理由にしているが、実際にはAppleの製品ライン維持の都合が大きい。
AIでも露呈した「利益最適化企業」としてのApple
2024年から加速するAI競争においても、Appleは類似の姿勢を見せている。OpenAIやGoogleがAIを“OSの再定義”に使っている一方で、Appleは「Apple Intelligence」と名づけた慎重すぎる機能群にとどまった。
- Siriの進化は制限付き
- iPhone上のAI生成は“場面限定”
- ローカル実行にこだわる一方、柔軟性や拡張性に乏しい
ここでも見られるのは、「ユーザー体験の革新」よりも、「既存製品構造を壊さないこと」が優先されている姿勢だ。AppleのAIは、真に“思考のインターフェース”になる未来像を描いていない。
「革新企業」から「守りの巨人」へ
Appleは今も世界最高のプロダクト企業であることに疑いはない。しかし、2000年代に“iPodを殺すためにiPhoneを出した”勇気ある企業とは別物になりつつある。
今のAppleは、「iPadがMacを殺さないようにする」、「AIがSiriを壊さないようにする」――常に“内部の壁”に気を遣いながら製品を出す企業になってしまった。
革新ではなく、利益最適化。
体験の統合ではなく、ラインナップの死守。
Appleは、便利なエコシステムを売っているだけで、“未来”を売らなくなってはいないか?
結びに:Appleの核心本性――表面は“Think Different”、骨子は“Protect Profit”
AppleがiPadにmacOSを載せない理由は、技術的な制約ではない。
それは「革新の否定」でもなければ、「ユーザー体験の最適化」でもない。
むしろその本質は、自社製品同士のKannibalization(食い合い)を避けるための、計算された抑制にある。
Appleは、かつて“iPodを殺してiPhoneを生んだ”勇気ある企業だった。
だが今は、“iPadがMacを殺さないように抑え込む”守りの企業になった。
かつて掲げたスローガン「Think Different」は、今や巧妙に再パッケージされたマーケティング装置でしかない。
Appleの行動原理はこうだ。
表面は“Think Different”、骨子は“Protect Profit”。
これが、iPadが“完全なMac”になれない本当の理由であり、AppleがAI時代の主導権を握れない必然でもある。
ユーザーの欲する未来と、Appleが守りたい現在。そのギャップが、ますます広がっている。