リヤドで開催された「未来投資戦略(FII)」カンファレンスは10月29日・30日の2日間、世界的なAI技術の進展とその社会的影響が中心に取り上げられました。特に、新興市場へのAIの公平な普及、AI技術の地政学的影響、AIの未来に関するビジョンが深く議論されました。
初日:AIインクルーシブ・イニシアチブの発足
FII研究所は、新興市場におけるAIの公平な導入を目指す「AIインクルーシブ・イニシアチブ」を発表しました。この取り組みは、テクノロジー企業や知識パートナー、政策立案者を結集し、プロジェクトへの支援を提供します。AIの導入がすべての人に利益をもたらすことを目指し、社会全体での公平性と包括性を高めるFII研究所の使命が示されました。
AIの未来に関するセッション
TikTokのCEOショウ・チュウ氏やSandboxAQのジャック・ヒダリー氏を含む技術界のリーダーたちが、AI技術の進展、特に生成AIがもたらす可能性について議論しました。議論では、AIが労働市場に及ぼす影響や、AIアルゴリズムの偏りやプライバシーの課題など、AIの倫理的課題が注目されました。
孫正義氏のビジョンと戦略的投資
ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長が登壇し、近年注力しているAI関連事業について「今は大きなチャンスに備え、何百億ドルも貯めている」と明かしました。孫氏は人類の知性を遥かに凌駕する「人工超知能」(ASI)の実現に注力しており、2035年までの実現を見据え「人類を幸せにするためだ」と述べました。また、傘下の英半導体設計大手Armの成長をAI分野の中核として位置づけ、Armの半導体チップがAI開発に不可欠であることを強調しました。さらに、NVIDIAの市場評価について「過小評価だ」とし、今後もAI市場の成長が続くと見ています。
2日目:エリック・シュミット博士の基調講演
元GoogleのCEOエリック・シュミット博士が、AI技術の地政学的影響について講演しました。デジタルインフラの進展が国際関係を再構築し、サイバーセキュリティの重要性が増している現状を踏まえ、データガバナンスやデジタル貿易における国際協力の必要性を訴えました。
特別ゲストとして登壇したイーロン・マスク氏は、「人類に貢献するAI」をテーマにしたビジョンを共有しました。彼は、AIが人間の幸福を優先すべきと述べ、自身の開発するxAIプロジェクトについて説明しました。マスク氏は、人類の経験をより豊かにする方向でのAI開発が重要であると強調しました。
「未来の働き方」に関する報告
FII研究所は、最新の研究「未来の働き方のコンパス」を発表し、先端技術の進展が雇用に与える影響についての調査結果を示しました。AIが2030年までに世界経済に13兆ドルの貢献をもたらす可能性があることを背景に、若年層の技術訓練不足の課題も浮き彫りにされました。
この2日間、FIIカンファレンスでは、AIと技術の未来がもたらす影響とその可能性が多面的に議論され、持続可能かつ包摂的な未来のための具体的なアプローチが提示されました。