OpenAIは、複雑なコーディングや業務自動化に対応する新モデル群「GPT-5.6」を発表した。APIおよびソフトウェア開発支援ツール「Codex」で提供を開始するとともに、ChatGPTの利用形態を「Chat」「Work」「Codex」の3つに整理した。
あわせて、開発者向けイベント「OpenAI Build Week」を2026年7月21日午後5時(米国太平洋時間)まで開催している。期間中に制作したプロジェクトを募集し、総額10万ドルの賞金やOpenAI DevDayの招待券、ChatGPT Proの1年間無料利用権などを提供する。
GPT-5.6は3モデル構成
GPT-5.6は、用途や処理速度、コストに応じて選択できる3モデルで構成される。
最上位の「GPT-5.6 Sol」は、高度なコーディングやAIエージェントを使った複雑な作業を想定したフラッグシップモデル。OpenAIによると、最大の推論設定ではClaude Fable 5を上回る性能を示しながら、出力トークン数を54%削減したという。
「GPT-5.6 Terra」は、日常的な業務や本番環境での利用を想定したバランス型モデルで、GPT-5.5に近い性能を、より低い価格で提供する。
「GPT-5.6 Luna」は、処理速度と価格を重視したモデルで、内容が明確に定義された大量処理に適している。
GPT-5.6では、コーディング性能に加え、外部ツールの操作、コンピューター操作、デザイン判断などの能力を強化した。より少ないトークンで複雑な処理を実行する効率性も重視している。
ChatGPTを「Chat・Work・Codex」に再編
OpenAIは、新しいChatGPTの役割を「Chat」「Work」「Codex」の3つに整理した。
「Chat」は、質問への回答やアイデア出し、文章作成など、日常的な用途に向けた機能となる。
「Work」は、複数の工程を含む業務向けの機能で、Web、モバイル、デスクトップで利用できる。接続されたアプリやファイルを操作し、ユーザーが指定した目標から、文書や資料などの完成物を作成する。
「Codex」は、ソフトウェア開発向けの環境として位置付ける。ローカルのコードやターミナル、開発ツールと連携し、リポジトリ単位での開発や修正、レビューに対応する。モバイル版から作業を継続することもできる。
OpenAIは、3つの使い分けを「回答にはChat、業務フローにはWork、開発にはCodex」と説明している。
Codexにブラウザー操作やアプリ公開機能
Codexでは、コード差分の編集やプルリクエストのレビューに加え、「PR Chat」を使ってCodex内から追加修正を指示できる。
内蔵ブラウザーは、ログイン済みのタブやダウンロードファイル、画面上の注釈を扱える。Chrome拡張機能を利用すれば、既存のブラウザーセッションと連携することも可能だ。
コンピューター操作機能を使った長時間の複数工程作業にも対応するほか、「Sites」では、アイデアからアプリケーションを作成し、短時間で公開できるとしている。
また、Codexに作業の完了条件を指定する「/goal」機能を追加した。成果物の条件や制約、完了を証明する方法を設定し、レビュー、修正、検証を繰り返しながら、テストを通過するまで作業を継続できる。
独立した作業を複数のサブエージェントに分割する機能も用意する。性能改善、システム移行、不安定なテストの調査、大規模なコード修正などを並行して進め、結果をメインの作業スレッドに集約できる。
外部システムからWorkspace Agentを起動
ChatGPTの「Workspace Agent」では、接続されたアプリの利用、定義済みスキルの実行、定期処理、成果物の保存などを組み合わせた業務フローを作成できる。
さらにAPIトリガーを利用することで、問い合わせフォーム、サポートチケット、CRMの登録情報、企業のバックエンドシステムなどを起点に、Workspace Agentを実行できる。
処理は非同期で行われ、結果は事前に設定された保存先へ出力される。これにより、ChatGPT上で作成した業務エージェントを、企業の既存システムから呼び出せるようになる。
トークン消費を抑える4つの方法
OpenAIは、GPT-5.6を効率的に利用するための方法として、4つのポイントを紹介した。
繰り返し利用するプロンプトの前半部分をキャッシュし、同じ内容を毎回処理しないようにすることで、コストと応答時間を削減できる。
複数のやり取りで目標や前提条件が変わらない場合は、過去の推論情報を引き継ぐ設定を利用し、同じ判断を繰り返さないようにする。
また、GPT-5.6の「Programmatic Tool Calling」では、モデルがJavaScriptを生成し、複数のツール呼び出しを段階的に実行する。コードは専用のサンドボックス上で動作するため、途中の処理を会話のコンテキストに含めずに済む。
Codex向けのスキルや「AGENTS.md」についても、重複した指示や細かすぎる規則を見直すよう推奨している。GPT-5.6は指示の意図を以前より正確に理解できるため、指示文を簡潔にすることで、トークン使用量を削減できるとしている。
18年前の不具合をAIで特定
OpenAIは、社内の技術事例として、Rocksetで発生していたクラッシュの原因調査も紹介した。
1年間分のコアダンプを分析した結果、Azure上の不具合のあるホストと、GNU libunwindに存在していた18年前の競合状態が、見かけ上は同じクラッシュを引き起こしていたことが判明したという。
また、専門家が本番環境で行った修正を、評価テストや開発タスクへ変換する仕組みも開発した。利用者による修正内容を追跡し、特定の問題を再現する評価項目と、Codexが対応可能な範囲を限定した修正タスクを自動的に作成する。
これにより、人間による修正を単なる個別対応で終わらせず、次のモデルやシステム改善に反映できるとしている。
GPT-5.6を使った開発事例も公開
OpenAIは、GPT-5.6とCodexを利用した複数の開発事例を公開している。
Pietro Schirano氏は、GPT-5.6 Solに1つの指示と自身のiMessage履歴を与え、ローカル環境で動作する学習パイプラインを構築した。約800万トークンのデータを使い、138万パラメーター、4層構成のデコーダー型Transformerを学習させ、自身の文章スタイルに近い返信を生成したという。
Vercelでは、以前のモデルでは作業が止まっていた社内向けデータサイエンスエージェントを、GPT-5.6とCodexを使って改善した。
このほか、タワーディフェンスゲーム、飲食店の注文CSVから店舗別分析や営業メールを作成するCodex Skill、犬の献血施設を検索するアプリ、韓国のCodexコミュニティー向けイベント情報サイトなどが紹介されている。
Build Weekは7月21日まで
OpenAI Build Weekは、2026年7月13日から21日まで開催される開発イベント。個人またはチームで参加でき、世界各地で60以上のコミュニティーイベントが予定されている。
Greg Brockman氏やThibault Sottiaux氏による開幕配信、Peter Steinberger氏によるCodex解説、Discord上での開発者コミュニティーやオフィスアワーも提供する。
応募作品はOpenAI幹部らが審査し、受賞者には総額10万ドルの賞金、OpenAI DevDayへの招待、ChatGPT Proの1年間無料利用権、OpenAI公式メディアでの紹介機会などが提供される。
プロジェクトの応募期限は、2026年7月21日午後5時(米国太平洋時間)となっている。