日本通信は2026年7月28日、新たな通信ブランド「blue mobile(ブルーモバイル)」を発表した。
同社はNTTドコモの音声通信網およびSMS網との相互接続に基づき、2026年11月24日から「ネオキャリア」として新サービスを開始する予定だ。
発表されたのはブランド名とロゴのみ。料金、データ容量、通話サービス、海外ローミングなどの詳細は、現時点では明らかにされていない。
そこで今回は、日本通信の既存プラン、これまでに公表されたネオキャリア構想、そして同社の「ビジョン2030」から、blue mobileの料金とサービス内容を予測してみたい。
※本記事に記載する料金・プランは、公開情報に基づく独自予測であり、日本通信が正式に発表したものではない。
「blue mobile」は何が新しいのか
日本通信はblue mobileについて、「あらゆる制約から解き放たれた自由なデジタル社会」を目指すブランドだと説明している。
かなり壮大な表現だが、一般の利用者にとって重要なのは、従来の日本通信SIMと何が違うのかという点だ。
通常のMVNOは、大手携帯電話会社から音声通話、SMS、データ通信などの機能をまとめて借り、それを自社ブランドで販売している。
これに対して日本通信は、ドコモの基地局を利用しながら、自社のコアネットワークをドコモの音声通信網およびSMS網に直接接続する。さらに、総務省から090・080・070番号の割り当てを受け、自社でSIMやeSIMを発行できるようになる。
日本通信はこの事業形態を「ネオキャリア」と呼んでいる。
ただし、ネオキャリアは法律上の正式な事業者区分ではなく、日本通信が独自に使っている呼称だ。blue mobileがドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイルに続く新しいMNOになるわけではない。
blue mobileは自社の周波数や全国の基地局を保有せず、無線部分では引き続きドコモのネットワークを利用する。
簡単に表現すれば、次のようになる。
従来のMVNOより独立性は高いが、ドコモやauのようなMNOではない。
それでも、従来の日本通信SIMより自由にサービスを設計できるようになるのは確かだ。
blue mobileの料金プランを予測
日本通信SIMは現在、1GB・月額290円、20GB・月額1,390円、50GB・月額2,178円という、極めて低価格なプランを提供している。
blue mobileになったからといって、これらを大幅に値上げすれば、日本通信の最大の強みを自ら失うことになる。
したがって、blue mobileの基本料金は現行プランをほぼ引き継ぎ、一部の容量や通話サービスを変更する可能性が高い。
筆者が予測する料金体系は次の通りだ。
| 予測プラン | 予想月額 | 予想内容 |
|---|---|---|
| blue mini | 290~390円 | 1GB、通話従量制 |
| blue standard | 1,390~1,590円 | 20~30GB、5分かけ放題または月70分無料通話 |
| blue large | 2,178~2,480円 | 50~60GB、5分かけ放題または月70分無料通話 |
| blue global | 2,000~3,000円 | 国内20GB前後、海外ローミング対応 |
| 完全かけ放題 | +1,200~1,600円 | 国内通話定額オプション |
最も可能性が高いのは、現行の日本通信SIMをblue mobileへ移行し、料金をほぼ据え置いたまま、海外ローミングや自社eSIMなどを追加する形だ。
本命は「月額980円プラン」か
日本通信が2026年5月に発表した「ビジョン2030」には、非常に興味深い数字が記載されている。
同社は2030年度までに通信サービスを425万回線へ拡大し、1回線当たりの平均月額収入、いわゆるARPUを980円とする目標を掲げている。
この「980円」という数字から考えると、blue mobileの象徴となる月額980円前後の主力プランが登場する可能性がある。
例えば、次のようなプランだ。
月額980円
データ通信10GB
5分以内の国内通話無料
eSIM対応
海外ローミング利用可能
あるいは、データ通信を5GB程度に抑える代わりに、月70分の無料通話を付けることも考えられる。
月額980円なら、ahamo、LINEMO、UQ mobileなどのオンライン専用・サブブランドより圧倒的に安い。日本通信らしい価格訴求もしやすく、「ネオキャリア誕生」を象徴するプランとして十分なインパクトがある。
ただし、ARPU980円は全利用者の平均収入を示す数字であり、月額980円プランの登場を直接意味するものではない。
低価格の基本料金に、通話定額、追加データ、海外ローミング、法人向け認証サービスなどを加え、平均収入を980円にする可能性もある。
「着信料」を利用した激安通話プラン
日本通信がネオキャリアのメリットとして繰り返し説明しているのが、音声通話の着信に伴う接続料収入だ。
従来の卸契約では、日本通信の利用者が電話をかけると、日本通信はドコモに通話料金を支払う。一方、音声網を直接相互接続すれば、他社の利用者からblue mobile利用者へ電話がかかってきた際、日本通信が発信側の通信事業者から接続料を受け取れるようになる。
その収入を利用者へ還元すれば、月額料金や通話定額をさらに安くできる。
ただし、「電話を受けると利用者がお金をもらえる」というプランが登場する可能性は低い。
利用者へ着信料を直接還元すると、機械による大量発信、複数回線間の相互通話、コールセンター利用など、接続料を狙った不正利用が発生しかねないからだ。
現実的には、着信による収入を原資として、次のような低価格通話サービスを提供すると思われる。
- 5分かけ放題を基本料金に含める
- 完全かけ放題を月額1,200円前後に値下げする
- 月70分無料通話を月100~200分へ拡大する
- 家族間・blue mobile同士の通話を無料にする
- 小容量データと通話定額を組み合わせたシニア向けプランを提供する
blue mobileが価格面で最も差別化しやすいのは、実はデータ通信より音声通話かもしれない。
海外ローミングは有力だが、無料とは限らない
日本通信はネオキャリアで実現可能になるサービスとして、海外通信事業者との直接契約による海外ローミングを挙げている。
したがって、blue mobileが海外データローミングに対応する可能性はかなり高い。
問題は、その料金だ。
ahamoは対象国・地域で一定量まで追加料金なしでデータ通信を利用できる。楽天モバイルも毎月一定量の海外通信を基本料金に含めている。
blue mobileがこれらに対抗するなら、次のような設計が考えられる。
- 毎月1~2GBの海外通信を標準付帯
- 1GB・500~1,000円程度の海外トッピング
- 24時間単位の海外データ使い放題
- 国内データ容量を海外でも共用
- 訪日外国人向けの短期eSIM
ただし、日本通信の利用者は低価格志向が強い。海外へ行かない利用者にもローミング費用を負担させるより、必要な人だけ追加購入する方式になる可能性が高い。
povoより「自由」になれるのか
blue mobileは「あらゆる制約から解き放たれた自由」を掲げているが、料金プランの自由度だけでいえば、すでにpovoという強力な先行サービスが存在する。
povoは基本料0円の回線に、利用者が必要なデータ容量、通話サービス、利用期間などを自由に追加する仕組みを採用している。
1時間、24時間、7日間、30日間、半年間など、利用状況に応じて商品を選べるため、利用者側から見た自由度は非常に高い。
一方、blue mobileがいう「自由」は、少し意味が異なる。
povoは利用者が自由にサービスを選べる。
blue mobileは日本通信が自由にサービスを設計できる。
音声網との相互接続によって自由になるのは、まず日本通信自身だ。その自由が、どの程度利用者へ還元されるのかは、正式なプランを見るまで分からない。
また、povoを運営するKDDIは自社の周波数と基地局を持っているため、余剰ネットワーク容量を24時間使い放題などの商品として販売できる。
日本通信はデータ通信部分で引き続きドコモのネットワークを利用するため、利用量が増えるほどドコモに支払う費用も増加する。povoのような0円維持や短期間の大容量使い放題を、そのまま再現するのは難しいだろう。
blue mobileはpovoと同じ方向で競争するのではなく、毎月の通信量が安定している利用者や、音声通話を多く使う利用者を狙う可能性が高い。
マルチキャリア対応は初期には期待しすぎない方がいい
日本通信は将来的な構想として、1枚のSIMで複数通信事業者のネットワークを利用するマルチキャリア機能も挙げている。
これが実現すれば、ドコモ網で障害が発生した場合にauやソフトバンクへ切り替えるといったサービスも技術的には考えられる。
しかし、他社ネットワークを利用するには、それぞれの通信事業者との契約や技術対応が必要になる。2026年11月の開始時点から個人向けプランで利用できる可能性は低い。
初期のマルチキャリアサービスは、災害対策を重視する企業、自治体、金融機関、IoT機器などを対象に、一般プランとは別料金で提供されると考える方が自然だ。
FPoSとSIM認証は個人利用者に必要なのか
blue mobileは、日本通信が推進するデジタル認証基盤「FPoS」の思想から生まれたブランドと説明されている。
同社はSIMやeSIMの中に電子証明書の秘密鍵を保存し、通信契約と本人確認、電子署名、サービスへのログインなどを組み合わせる構想を持っている。
金融機関や行政サービスでは価値のある技術だが、一般の利用者が「月額料金を払ってでも欲しい」と感じる機能かどうかは別問題だ。
少なくともサービス開始当初は、個人向けblue mobileの主要な魅力というより、法人・金融・行政向け事業の基盤として使われる可能性が高い。
一般利用者にとっては、「パスワードなしで安全にログインできる」といった分かりやすいサービスまで落とし込めるかが鍵になる。
実際には「日本通信SIMの大型アップデート」か
blue mobileの技術的な進歩は本物だ。
自社で電話番号とSIMを管理し、音声網とSMS網を直接接続することは、一般的なMVNOには簡単に実現できない。海外ローミング、音声料金、eSIM、SIM認証などの自由度も高まる。
一方で、個人向け料金プランが通信業界を一変させるほど革新的になるとは限らない。
現時点で最も現実的な姿は、次のようなものだろう。
日本通信SIMをblue mobileへリブランドし、料金水準はほぼ維持。自社SIM・eSIM、APN設定の簡素化、海外ローミング、低価格な通話定額を追加する。
つまり、通信設備としては大きな進化だが、利用者から見れば「日本通信SIMの大型アップデート」に近い。
まとめ:技術は本物、ブランド表現は盛りすぎ
blue mobileの予測をまとめると、次のようになる。
- 月額290円の小容量プランは継続する可能性が高い
- 20GB・1,390円前後が主力になる
- 月額980円の象徴的な新プランにも期待できる
- 通話定額は現在より安くなる可能性がある
- 海外データローミングは有力
- 自社SIM・eSIMとAPN設定の簡素化は実現可能性が高い
- マルチキャリアとSIM認証は、まず法人向けになる可能性が高い
- povoのような0円+自由なトッピング方式になる可能性は低い
日本通信はblue mobileについて、「あらゆる制約から解き放たれた自由」を掲げている。
しかし、現段階で制約から解き放たれたのは、利用者というより日本通信自身である。
音声サービスをドコモの卸条件に全面的に依存せず、自社で設計できるようになった。その自由を低料金、便利な海外利用、柔軟な通話サービスとして利用者へ還元できるかが、blue mobileの本当の評価を決める。
技術投資は本物だが、「日本初」「世界初」「ネオキャリア」という言葉だけで通信革命と判断するのは早い。
2026年11月24日に発表されるべきなのは、青空をイメージしたブランドストーリーではない。
利用者が本当に知りたいのは、結局のところ「何GBを、月額いくらで、どこまで自由に使えるのか」である。