AI業界の投資家ネイサン・ベネイチ氏が2024年10月10日に発表した最新の「STATE OF AI REPORT 2024」は、AI基盤モデルの成長と収益化の加速を解説し、急速に変化するAI業界の現状をまとめました。
商業化に向かう生成AIの急成長
昨年の報告では生成AIの新規性と普及の期待が強調されましたが、今年の報告書では、商業化の進展と企業導入の加速が明らかになりました。米国のOpenAIはすでに数十億ドルの収益を上げ、ElevenLabsやSynthesiaなどの生成AIツールは、フォーチュン500企業の中で日常的に利用されています。しかし、急成長に伴い、政策やインフラ面での課題も浮上しています。
規制を巡る国際的な対立
政策面では、ヨーロッパと米国の間でAI規制を巡る対立が深刻化しています。特にEUのAI法成立後も産業界から慎重な意見が多く、カリフォルニア州のAI規制案は業界内で賛否が分かれるなど、調整が進められています。こうした中、各国がAIガバナンスの共通基準を模索しているものの、意見の相違が依然として大きな課題となっています。
資源逼迫とインフラ整備の課題
生成AIの急成長は計算資源の逼迫をもたらし、データセンターの電力や水資源の確保が難航しています。インフラ構築には巨額の投資が必要で、国際的な資金調達の必要性も高まっています。また、気候変動対応として掲げられたネットゼロ目標もAI需要増加により困難になりつつあります。
NVIDIAの台頭と株式市場への影響
レポートは、米国の半導体大手NVIDIAが市場価値3兆ドルに到達し、AIインフラ需要の中心的な存在となったことを強調。中国市場での制限や競合からの挑戦もあるものの、AI分野での影響力は揺るがず、AIブームを象徴しています。NVIDIAの急成長は、AI関連銘柄の株式市場における価値向上にも大きな影響を与えています。
新たな技術と将来の可能性
企業の取り組みとして、大規模言語モデル(LLM)の強化や強化学習の導入によるエージェント型AIの可能性が注目されています。OpenAIや中国の研究機関が推進するAI研究は、言語処理を超えて生物学や数学など多様な分野での応用を進め、基盤モデルの多様化が進んでいます。
AIリスクとビジネスモデルの課題
AIのリスクに関する議論も一段落しましたが、モデルの脆弱性や悪用の可能性については依然として懸念があり、研究者たちは予防策を探求しています。さらに、企業が収益化に苦労する中で、ビジネスモデルとして「擬似的買収」も浮上しました。こうした中で、AI産業がどのような形で収益性を維持できるかが今後の大きな課題とされています。
「STATE OF AI REPORT 2024」は、AI分野の最新動向を網羅し、今後のAI技術の進展と産業界への影響に関する洞察を提供する重要な資料です。詳細は以下のURLで確認できます。