OPPOは2025年12月16日、ハイエンドスマートフォン「Find X9」を日本で発表した。価格は14万9800円。本機は、OPPOのハイエンドモデルとして初めてFeliCaを搭載した点で注目を集めている。
発表会では「日本の当たり前」「安心して使えること」「日本市場と向き合う姿勢」といった言葉が繰り返された。しかしこのFind X9は、OPPOにとって“前進”であると同時に、これ以上言い訳ができなくなる危険な端末でもある。
「日本の当たり前」を語り始めたOPPO
Find X9は、ハッセルブラッドとの協業を継続しつつ、背面デザインを刷新。5000万画素×3眼+マルチスペクトルカメラという構成、Lumoイメージエンジン、Dimensity 9500のNPUを活用した並列処理など、カメラと処理性能は文句なくハイエンド水準だ。
さらに今回は、AI機能も「AIマインドスペース」を中心に、
- 情報の整理
- Gemini連携
- 日常行動の補助
といった“実用寄り”の方向性が示された。
だが、Find X9の最大のトピックはやはりFeliCa搭載である。
FeliCaは「機能」ではなく「免罪符」だった
オウガ・ジャパンの河野謙三氏は、FeliCa搭載の理由についてこう語っている。
「Find X8が想定以上の売上を記録した」
「日本市場を知っているのは我々」
しかし、この説明には明確な違和感がある。
もしFind X8が、FeliCa非搭載にもかかわらず成功したのであれば、Find X9でコストをかけてまでFeliCaを載せる合理性は薄い。
むしろ現実はこうだろう。
- Find X8は日本市場で苦戦した
- オウガ・ジャパンはその最大要因が「FeliCa非対応」だったと思った
- 本社もその理由を信じて無視できなくなった
- だから「悲願」として搭載に踏み切った
FeliCaは“成功の証”ではない。失敗を認めた結果としての是正策である。
「安心」という言葉が示す、OPPOの立ち位置
河野氏はFeliCaについて、
「普段は使わない人でも、何かあった時に使える安心感」
と説明している。
これは、日本市場においては非常に正しい理解だ。FeliCaは利用率の問題ではない。“持っていないと不安”という心理インフラなのである。
だが同時に、ここでOPPOは自らこう宣言したことになる。
「これからは、日本の基準で評価されても構わない」
つまりFind X9以降、
- FeliCaがないから売れない
- 日本独自仕様が重いから
- 本社が理解していないから
といった言い訳は、すべて通用しなくなる。
それでもProは出さない――本当の問題はそこだ
最大の疑問は、ここである。なぜFind X9 Proを日本に出さないのか。
- FeliCaは載せた
- 価格も14万円台
- ハイエンドとしての覚悟は見せた
これはもはや開発やコストではない。本気で日本市場で戦う覚悟があるかどうかの問題ではないか。
Galaxy Ultra、iPhone Pro、Pixel Proが並ぶ棚に、OPPO Find X9 Proを置く自信があるかないか。
Find X9は「試金石」ではない、「最終試験」だ
Find X9は、OPPOにとって都合の良いモデルではない。むしろ最も厳しい条件がそろった端末だ。
- FeliCaあり
- AIあり
- 高価格
- 言い訳なし
それでも売れなければ、理由は一つしか残らないだろう。すなわち、
OPPOのハイエンドは、日本では選ばれない
そう判断されれば、次に待つのは「中価格帯専業」か「静かな撤退」か、しかなくなりそうだ。
結論
Find X9は、「悲願のFeliCa搭載モデル」以上である。OPPOが日本市場に本気で残るかどうかを問われる、最後の試験紙である。
ここで結果が出なければ、次はもう「Proが来ない理由」を分析する記事すら書けなくなる。
それほどまでに、Find X9はOPPOにとって重い端末なのだ。