
中国のスマートフォンメーカー小米(Xiaomi)は、自社開発の最新フラッグシップSoC「玄戒(げんかい)O1」を正式発表し、その詳細な性能比較を中国の技術系メディア「爱搞机」が紹介した。
玄戒O1は、TSMCの第2世代3nmプロセス(N3E)で製造され、トランジスタ数は190億、チップ面積は109mm²と、AppleのA18 ProやMediaTekの天玑9400よりもコンパクトな構成となっている。
CPU構成とベンチマーク結果
玄戒O1は、合計10コアの4クラスタ設計を採用しており、内訳は以下の通り:
- 超大型コア X925(3.9GHz×2、各2MB L2キャッシュ)
- パフォーマンスコア A725(3.4GHz×4、各1MB L2キャッシュ)
- 省電力コア A725(1.9GHz×2、各1MB L2キャッシュ)
- 省電力コア A520(1.8GHz×2、512KB L2キャッシュ共有)
合計10.5MBのL2キャッシュと16MBのL3キャッシュを備えるが、SLC(System-Level Cache)は省かれており、これは低負荷時の消費電力を抑える狙いとみられる。
GeekBench 5やRAR圧縮テストといった非ホワイトリスト系ベンチマークで比較すると、日常的な性能出力で玄戒O1は一部の保守的なSnapdragon 8 Gen3搭載機を上回る結果となった。
CPU・GPU性能の比較(総評)
- CPUシングルコア性能:A18 Pro > Snapdragon 8 Gen3 > 玄戒O1 > 天玑9400
- CPUマルチコア性能:Snapdragon 8 Gen3 > 玄戒O1 > 天玑9400 > A18 Pro
- GPU性能:天玑9400 > Snapdragon 8 Gen3 > 玄戒O1 > A18 Pro
玄戒O1に搭載されるGPU「Immortalis-G925 MC16」は、天玑9400と同世代の構成で、16基の演算ユニットを持つ。ただしクロック周波数が1.392GHzと控えめで、天玑9400(MC12@1.612GHz)に比べるとピーク性能ではやや劣る。SLCの非搭載が影響している可能性もある。
その他の仕様と評価
通信面では、TSMC製4nmプロセスで製造されたMediaTek製の外付け5Gモデム「T800」を採用。NPUは小米自社開発の6コア構成で、10MBのキャッシュと44TOPSの演算性能を有する。また、第4世代の自社ISP(画像処理プロセッサ)も搭載し、外部アプリからの直接利用も可能となっている。
消費電力効率では、10W未満の多コア実行環境で玄戒O1がSnapdragon 8 Gen3やA18 Proを上回る結果を示した。特に中核(A725)の効率性は顕著で、天玑9400のX4やA720を凌駕し、ゲームプレイ時の主力として機能している。
実機での体感と派生モデル
玄戒O1は、小米15S Proに初搭載されており、Snapdragon 8 Gen3搭載の小米15 Proとの操作体験に大きな違いは感じられないという。新たなSoCとしては、「使っていて違和感がない=成功」という評価が業界内で定着しつつある。
ただし、外付けモデムであることから、小米15S Proのバッテリー持続時間はやや短くなる傾向にあるとされる。この点を補うため、小米は低負荷時の電力最適化に注力していると考えられる。
なお、玄戒O1にはクロックを抑えた派生バージョン(X925@3.7GHz)も存在し、小米平板7 Ultraに搭載される予定。また、スマートウォッチ向けには「玄戒T1」が展開されており、Redmi Watch 5 eSIM版や小米Watch 4の記念モデルに採用されている。