
スマートフォンのカメラ性能、とりわけ望遠機能をめぐる競争がかつてないほど激化している中で、Huaweiが「Pura 80 Ultra」に搭載した新機構「一鏡双目(二眼一体)」ペリスコープ望遠カメラは、多くの技術者と写真愛好家の注目を集めている。一方、vivoはX200 Ultraなどにおいて、1/1.14型の大型センサーを使った高倍率デジタルクロップ方式で同様の焦点域をカバーし、スマートなアプローチを主張してきた。

本稿では、それぞれの技術的アプローチを細かく分解し、どちらが“本物の進化”なのか、それとも“マーケティングトリック”にすぎないのかを検証する。
■ 望遠技術の基本構造:Huaweiとvivoの違い
項目 | Huawei Pura 80 Ultra | vivo X200 Ultra |
---|---|---|
構造 | 光学ペリスコープ(プリズム移動)で実焦点切替 | 単焦点+中央クロップ |
センサーサイズ | 1/1.28型 → 212mm時は1/2.5型相当をフル活用 | 1/1.14型 → 約16%をクロップ(=1/2.5型相当) |
焦点距離 | 3.7倍(83mm)+ 9.4倍(212mm)物理切替 | 等效85mm→212mmにクロップ処理 |
光学F値 | F2.4(3.7倍) / F3.6(9.4倍) | F2.27(クロップ後も維持) |
通光孔径(物理) | 約6.5〜7mm(212mm時) | 約11mm(85mm時の光学) |
オートフォーカス | 焦点別に最適化設計 | 単一設計をクロップ利用 |
解像感・画質 | 各焦点に最適化され、高いシャープネスと低歪み | 中央のみ高精細、周辺描写は対象外 |

■ 光学的正当性 vs デジタル処理の効率
Huaweiの「一鏡双目」構造は、レンズ内のプリズムを移動させることで、2つの独立した光学経路を実現。これにより、3.7倍と9.4倍のズームでそれぞれ専用のフォーカス調整と画像補正が可能になる。212mmに相当する9.4倍望遠時には1/2.5型に相当するセンサー面積を物理的に活用しており、画素単位の画質維持・ノイズ抑制に優れる。
対してvivoは、1/1.14型の大型センサーの中央部分のみを使用して望遠画像を得るデジタルクロップ方式を採用。ただしそのときの実効面積はHuaweiとほぼ同じ1/2.5型相当となるため、センサーサイズ的には負けていないとも言える。
■ 暗所性能とF値に見るトレードオフ
vivoのアプローチで特筆すべきは、F2.27という明るい絞り値を維持したままクロップ可能という点である。Huaweiの212mm時はF3.6と暗めで、理論上の光量はvivoに軍配が上がる。ただし、Huaweiは望遠モジュールの物理焦点距離が長く、通光孔径(実際に光を取り込むレンズ開口)はvivoよりも大きい可能性があり、一概に暗所性能が劣るとは言えない。
実際の撮影条件では、Huaweiの光学設計による色収差補正・歪み補正・AF精度が、F値以上に画質に貢献する場面が多い。
■ セールストークで終わらせない設計思想の差
vivoのデジタルクロップ方式は、構造がシンプルでコストパフォーマンスもよく、量産性に優れる。しかしそれはあくまで設計側の都合であり、ユーザー体験としての望遠性能ではHuaweiの「二眼一体」構造が一歩先を行っているのが実情だ。
特に、遠景の解像感・自然な背景ボケ・画角の正確さといった面では、Huaweiの物理ズームによる画作りは、単なるデジタル処理では得られない“正統派の写り”を実現している。
■ 総合評価:新たな到達点か、マーケティングか?
観点 | 勝者 | 理由 |
---|---|---|
解像感・シャープネス | Huawei | 光学設計により周辺まで高画質 |
暗所性能(F値) | vivo | F2.27を維持しシャッター速度に余裕 |
センサー活用効率 | Huawei | クロップなしで専用面積を活用 |
AF精度・追従性 | Huawei | 焦点ごとの最適設計 |
ボケ量・演出性 | vivo | 絞り値が浅く背景処理が豊か |
実撮影の信頼性 | Huawei | 歪みが少なく遠距離撮影で有利 |
■ 結論
Huaweiの「二眼一体」望遠は、スマートフォン望遠カメラの設計において、“正攻法”での到達点と呼ぶにふさわしい完成度を備えている。一方で、vivoのようなデジタルクロップ式は、Huawei「二眼一体」構造と比べると妥協と最適化の産物に見えるかもしれないが、スマートフォンの薄型筐体という構造制約を考慮すれば、現時点ではデジタルクロップ式にも暗所撮影において一定の優位性がある。F値を維持したまま中央部分のみを利用することで、ISO感度やシャッタースピードの面で有利に働く場面も存在する。
とはいえ、Huaweiの「一鏡双目」構造では、光学的なプリズム移動によるズームに加え、必要に応じてデジタルクロップへの切り替えも可能となっており、両方式の利点を併せ持つハイブリッド可能である点が特筆される。つまり、あらゆるシーンで柔軟な対応が可能であるという点で、Huaweiのアプローチはやはり一歩先を行っている。よって結論は明白だ。Huaweiはただのセールスポイントではなく、本物の進化を示した。