中国のスマートフォンメーカー「HONOR(オナー)」が、最新の「Magic7シリーズ」にモバイル向けオートパイロットAIを搭載し、革新を進める中、CEOの趙明(Zhao Ming)が突然辞職したことが大きな話題を呼んでいます。しかし、この辞任は本当に“突然”だったのでしょうか?
計画された辞任?華為からの独立と管理層の役割
関係者の間では、「これはHONORが華為(Huawei)から独立した際の既定路線であり、驚くべきことではない」という見方が広がっています。
2020年、米国の制裁を受けた華為は、HONORを切り離し、深圳国資を中心としたコンソーシアムが買収。その際、事業の安定性を確保し、資産価値の維持・向上を目的に、経営陣もHONORと共に移籍する形となりました。
その背景を考えれば、趙明の辞任は「剥離時の約束を果たしただけ」とも言えます。買収側の投資価値を保証し、HONORをIPO(新規株式公開)まで導いた後、経営陣が徐々に退場するのは“既定のシナリオ”だった可能性が高いでしょう。
実際、半年前にはHONORの副董事長を務めていた万飙(Wan Biao)も辞任しています。彼らは独立後のHONORを軌道に乗せ、株主への約束を果たした上で退場するという計画通りに動いていたと考えられます。
HONORの次のリーダー、李健の役割
趙明の後任としてCEOに就任した李健(Li Jian)は、2001年に華為に入社し、監査部門や戦略管理部門を歴任。2021年にHONORに移籍後は、経営陣の中核として企業改革とIPO準備に携わってきました。戦略の継続性を重視するHONORにとって、彼のリーダーシップはIPO成功の鍵を握るでしょう。
オートパイロットAIの行方—戦略変更はあるのか?
趙明の辞任によって、Magic7シリーズの目玉であるモバイル向けオートパイロットAIの戦略に変化が生じる可能性もあります。
しかし、現時点でのHONORの方針を見る限り、この技術は同社の成長戦略の重要な一部であり、大幅な方向転換は考えにくいでしょう。むしろ、IPOを控えた今、HONORは革新的な技術を前面に押し出し、投資家の期待を高める動きに出る可能性が高いといえます。
HONORの未来は?
市場データによると、HONORは2024年の中国市場でのスマホ出荷台数が前年比3%減少し、第4四半期にはトップ5から脱落しました。特に、中低価格帯市場では、華為、OPPO、Vivoといった競合の圧力が増し、HONORのシェアが徐々に縮小している状況です。
今後、HONORがIPOを成功させるためには:
- 国内市場の立て直し
- 海外市場の拡大
- オートパイロットAIなどの先進技術のアピール
- 収益構造の改善
といった戦略が不可欠になります。趙明は「2025年に向けてオンライン・オフライン両方の強化を図る」としていましたが、李健がどのようにこの方針を実行していくのかが注目されます。
まとめ:計画通りの辞任、オートパイロットAIの未来は?
趙明の辞任は、表面上は「突然の出来事」のように見えますが、実際はHONORの独立計画に沿った“予定調和”の動きだった可能性が高いでしょう。新経営陣のもと、オートパイロットAIの開発がどのように進化していくのか、そしてHONORがIPOを成功させることができるのか。今後の動向がますます注目されます。