日本通信が新ブランド「blue mobile」を発表した。NTTドコモの音声・SMS網との相互接続を基盤とする「ネオキャリア」サービスとして、2026年11月24日に開始する予定だ。ただし、料金プランやeSIMの具体的な仕様など、利用者にとって重要な部分はまだ公表されていない。
前回は、発表済みの情報をもとにblue mobileのサービス内容を予想した。その後、日本通信と協業関係にあるHISモバイルが新料金「自由自在3.0プラン」を発表した。
今回はこの新しい材料も加え、「blue」というブランド名、料金、そしてeSIMという3つの論点から、blue mobileの姿をもう一度予想してみたい。
ブランド名「blue」は青空だけなのか
日本通信の福田尚久社長は、飛行機が嵐を抜けた先に広がる青空をイメージし、さまざまな制約から解放された自由を「blue」という名称に込めたと説明している。
これが公式に説明されている命名理由だ。
その説明を踏まえたうえで、筆者にはもう一つの読み方も浮かぶ。
「blue mobile」は、長年使われてきた「b-mobile」の「b」を言葉にした名前ではないか、というものだ。
もちろん、これは日本通信が説明している語源ではなく、あくまでブランドの連続性についての筆者の考察である。
「b-mobile」から「日本通信SIM」、そして「blue mobile」へ。
ブランドが変わっても、既存の通信サービスに存在する制約を取り除こうとする日本通信の姿勢は続いている。
かつて一文字だった「b」が、音声・SMS網の相互接続という新しい段階で「blue」になった――。そう考えれば、「制約から解放された青空」という公式説明とも無理なく重なる。
HISモバイル「自由自在3.0」はblue mobileの料金を予想する材料になる
HISモバイルが2026年9月に開始した「自由自在3.0プラン」は、音声SIMで3GBが月770円、7GBが990円、10GBが1,299円、20GBが1,699円、30GBが1,999円となっている。
20GBと30GBには1回6分以内の国内通話定額が含まれ、全プランの従量通話料は30秒9円だ。
さらに、HISグループらしい付加価値として、海外130以上の国・地域で利用できる4GB・15日間の海外eSIMを、1電話番号につき年1回提供する。
ここで興味深いのは、HISモバイルの料金そのものより、blue mobileが同じ方向に進む必要はないという点だ。
HISモバイルは旅行会社グループの通信サービスであるため、海外旅行や出張との親和性が重要になる。海外eSIMの無料提供も、その特徴を生かした付加価値と考えられる。
一方、blue mobileが日本国内での音声・データ通信を中心に設計するなら、海外旅行向けサービスを標準で付帯させる必要はない。
その分、料金そのものをさらに下げるという選択肢も考えられる。
また、フルMVNOとしてSIMやeSIMをより主体的に管理できるのであれば、将来的には国内SIMをそのまま海外で利用する国際ローミングや、必要な利用者だけが海外データ容量を追加購入する仕組みも考えられる。
つまり、
「海外eSIMを全員に付けるHISモバイル」
ではなく、
「国内料金を極限まで下げ、海外利用は必要な人だけ追加するblue mobile」
という棲み分けもあり得る。
現行の日本通信SIMより安くなるのか
もう一つ重要なのは、日本通信自身の現行料金との関係だ。
HISモバイルは20GB・1,699円で6分通話付き、30GB・1,999円で6分通話付きという価格を打ち出した。
一方、日本通信にはすでに20GB・1,390円、50GB・2,178円という低価格プランが存在する。
そのためblue mobileが単純に現行の日本通信SIMより高くなるだけなら、利用者から見れば「ネオキャリアになって何が便利になったのか」という疑問が生じる。
もちろん、ネオキャリア化の価値は料金だけではない。eSIM、国際ローミング、サービス開通の自由度、ネットワーク制御など、これまでMVNOでは難しかった部分が変わる可能性がある。
それでも、日本通信が長年「合理的な料金」を掲げてきた以上、blue mobileでも価格は最大の注目点になるだろう。
そこで筆者が期待しているのが、現行の日本通信SIMと同等、あるいはそれ以下の月額料金だ。
もう一つの伏兵は「契約事務手数料」
そして月額料金以上に注目したいのが、契約時の初期費用だ。
HISモバイルの初回契約事務手数料は3,300円。
格安SIMでは月額料金ばかり比較されるが、短期から中期の利用では初期費用の影響はかなり大きい。
例えば、
A社:月額990円+契約事務手数料3,300円
B社:月額1,090円+契約事務手数料0円
だったとする。
月額ではA社が100円安い。しかし3,300円の差を月100円で取り戻すには33カ月かかる。
つまり、約2年9カ月使ってようやく逆転する計算だ。
もしblue mobileがオンライン専用を前提として契約事務手数料を無料化すれば、月額料金を数十円、100円単位で競争するよりも強烈なインパクトになる可能性がある。
あるいは「サービス開始から年末まで契約事務手数料無料」といったスタートキャンペーンも考えられる。
現時点でblue mobileの初期費用は発表されていない。
11月24日のサービス開始時には、月額料金だけを見るのではなく、契約事務手数料、通話料金・通話定額、eSIM発行・再発行費用まで含め、12カ月・24カ月の総支払額で比較する必要があるだろう。
eSIMはドコモの「EID制約」から自由になるのか
料金以上に筆者が注目しているのがeSIMだ。
eSIMで使われる「EID」は、端末などに搭載されたeUICCを識別する番号である。
ここで重要なのは、
「ドコモの電波を使うこと」
と、
「eSIMプロファイルを誰の仕組みで発行・管理するか」
は、必ずしも同じ話ではないということだ。
その具体例がIIJmioにすでに存在する。
IIJmioでは、ドコモ網を利用する音声eSIMおよびSMS eSIMの「タイプD」は、開通時に端末のEID登録が必要だ。
ところが、同じドコモ網を利用するデータ通信専用eSIM「タイプI」ではEID登録を必要としない。
タイプIは、IIJが自ら提供するフルMVNOサービスである。
つまり、
「ドコモ網を利用するeSIM=必ずドコモ方式のEID登録が必要」
というわけではないことが、すでに実例として確認できる。
もちろん、IIJmioのタイプIはデータ通信専用であり、blue mobileは音声・SMS網との相互接続を前提とするため、まったく同じ仕組みになるとは限らない。
しかし、日本通信がblue mobileで自社側のeSIM発行・管理基盤を構築し、ドコモ側のEID照合に依存しない方式を採用するなら、eSIM利用時の端末制約が現在より緩和される可能性はある。
これは通常のスマートフォンだけでなく、PC、タブレット、ウェアラブル端末、さらには物理eSIMカードのような新しいeSIM利用形態を考えるうえでも興味深いポイントになる。
「ネオキャリア」の価値は料金だけではない
blue mobileが本当に面白いサービスになるかどうかは、単純に「月額何円か」だけでは決まらない。
既存MVNOではMNO側の仕組みに依存していた部分を、どこまで日本通信自身がコントロールできるようになるのか。
そこにこそ「ネオキャリア」を名乗る意味がある。
そして、その自由度が最終的に利用者へ、
「より安い」
「より簡単」
「対応端末が多い」
「海外でも使いやすい」
という形で還元されるのかが最大のポイントだ。
まとめ:11月24日に確認したい2つの答え
現時点でblue mobileの詳細はまだ発表されていない。
だからこそ、2026年11月24日のサービス開始時に筆者が特に確認したいのは、次の2点だ。
1.eSIMはドコモのEID制約から自由になるのか
2.料金は現行の日本通信SIMよりさらに低価格になるのか
そしてもう一つ、「契約事務手数料0円」というサプライズがあるのかにも注目したい。
月額100円の値下げより、3,300円の初期費用をなくす方が、少なくとも最初の数年間では利用者にとって大きな値下げになる場合があるからだ。
「制約から解放された青空」を意味するというblue mobile。
その「制約」の中に、料金だけでなく、EIDや契約事務手数料まで含まれているのか。
11月24日、その答えが明らかになる。